| 中間的な結論と若干の考察 |
| 事態は一気に核心まで到達してしまった。ここで、先ほどの「抵当権付金銭消費貸借契約証書」(図1.)、「停止条件付き賃貸借契約書」(図2.図3.)を、もう一度よく見直してもらいたい。実は、これらの書面に×印がつけられている印影こそが、偽造の疑いのある玉江さんの銀行印なのである。 さて、最初の問題に戻ろう。700万円の貸付金が当時存在していたか、それとも存在していなかったかを判断する分岐点は、貸付金(4)が存在するか否かにあった。この貸付金が存在するためには、図1.図2.図3.に示された証書類が真正なものであることが、必要である。しかし、それらの証書類の上には、いたるところに、×印付きの疑惑の印影が残されているのである。しかも、会話録をみると、問題の白い印鑑の話とともに、「それは五百万のあれをするときでしょう。」「うん、するとき。」などのやり取りもあるではないか。 「五百万のあれ」とは? 貸付金(4)の証書類は、真正なものと認めることが出来るだろうか? 玉江さんは、「そんなもの、単なるでっち上げだ。」と主張する。 読者はいかがお考えか? 当面の結論としては、疑惑が存在するとしておこう。限りなく黒い、黒光りするほどの灰色である。 ところで、会話録の中で、Hさんは、「じゃ、それまで実印は結局は絶対なかったんですよね。例えばつくったとしても実印はなかったということでしょう。」との発言をしているが、実印が偽造されなかったとは断定できない。あくまで、Eさんは、実印の印影をもつ印鑑を見たことがないと主張するにとどまる。見たことが無いからといって、存在しないとは断定できない。 むしろ、銀行印を偽造するならば、当然、実印も偽造すると考える方が、自然ではないのか?海野次長が、実印と銀行印とを取り違えたのは、海野次長は偽造には直接関与せず、前任者より引き継いだ偽造印の意味を充分に理解せずに、誤って使用してしまったためとも考えられる。海野氏が偽造印を社外の司法書士事務所の事務員に見せたということも、海野氏自身は、偽造印であることを知らなかったと考えれば、説明がつく。 |