この手形を初めてみたのは、白黒のコピーによってであった。当初より、「玉江峰子」の署名の書体が小さく、ちぢこまった感じを受けたが、他の手形の署名と比べるとたいした特徴も無く、あまり注目はしていなかった。ただ、この書体は、平成2年9月26日付けの500万円の証書貸付(謎の貸付金(4))の署名と酷似しているので、同じ人物の手によるものではないかとも想像していた。
司法書士事務所勤務のEさんの目撃発言により、銀行印の偽造の可能性があきらかであった。しかし、印影を照合するためには、より鮮明な資料が必要であった。そこで、幾つかの証書原本と前記6点の手形原本のカラーコピーを玉江さんに要求した。送られてきた平成2年3月6日振出の手形のカラーコピーは、それまで見ていた裁判資料等のコピーと比較してより鮮明なものであった。そのカラーコピーを見たところ、「峰」の縦線と「夂」の斜め右下に延びる線が二重に書かれているように見えた。また、「子」にもなにか別の文字のようなものが薄く浮かんで見えた。さらに「江」の「工」の接合部にもなにか別の筆記具で書かれたような痕跡があった。「偽造されているかもしれない!」と思った。そこで、玉江さんに次のようなメールを送った。
原本を確認してください。
平成2年3月6日振り出し約束手形の原本。
これは、玉江さんの直筆でしょうか?
多分、偽造だと思いますが、いつもの偽造犯とはちがう別人ですね。
コピーのせいでしょうか?玉江峰子の名前を書くとき、なぞったような痕がありませんか?
下書きのようなもの。「江」と「峰」と「子」です。
|
すぐに、電話から玉江さんの興奮した声が聞こえてきた。「あります!あります! ルーペで見るとハッキリ見えます。青い色でえぞった痕があります!」。
|